ロシアと西側諸国のメソッドの違い
教本著者イリーナ・ゴリンは、一般に言われているロシアンメソッドというのは実際にはロシアで生まれたものではなく、ベートーベンから受け継がれてきたピアノ奏法をロシアが守り抜き、昇華させた物なのだと言います。
以下ロシアンピアノスクールと、西側諸国の導入期のピアノ教授法の大きな違いを見て行きます。
教本著者イリーナ・ゴリンは、一般に言われているロシアンメソッドというのは実際にはロシアで生まれたものではなく、ベートーベンから受け継がれてきたピアノ奏法をロシアが守り抜き、昇華させた物なのだと言います。
以下ロシアンピアノスクールと、西側諸国の導入期のピアノ教授法の大きな違いを見て行きます。

20世紀中頃、国際教授法セミナーでロバート・ペースにより、固定5指ポジションが紹介され、多くの信奉者を集めました。ロシア、東ヨーロッパの数カ国を除いて瞬く間に世界中に広まり、西側諸国、特にアメリカでは導入期の標準的指導法になりました。残念ながらこのメソッドは5本指を鍵盤の中央部に固定して弾くことで、様々な弊害を引き起こしてしまいます。
固定5指の主な弊害
固定5指ポジションメソッドは指の番号さえわかれば小さな子でもすぐに曲が弾ける様になり、簡単に達成感が得られますが、何でも速く簡単にと利便性を優先した、まさしく現代のファーストフード社会を反映している様にも写ります。芸術作品を作り上げて行くには時間と手間がかかります。
20世紀中頃、国際教授法セミナーでロバート・ペースにより、固定5指ポジションが紹介され、多くの信奉者を集めました。ロシア、東ヨーロッパの数カ国を除いて瞬く間に世界中に広まり、西側諸国、特にアメリカでは導入期の標準的指導法になりました。残念ながらこのメソッドは5本指を鍵盤の中央部に固定して弾くことで、様々な弊害を引き起こしてしまいます。
固定5指の主な弊害
- 手首と前腕の緊張
- 腕、手、指の不自由な動き
- 動きの欠乏=筋肉の強張り→怪我、単調で機械的な演奏
- 指の番号で曲を弾く→音符の認識の遅れ
- レパートリーの制限 等々
固定5指ポジションメソッドは指の番号さえわかれば小さな子でもすぐに曲が弾ける様になり、簡単に達成感が得られますが、何でも速く簡単にと利便性を優先した、まさしく現代のファーストフード社会を反映している様にも写ります。芸術作品を作り上げて行くには時間と手間がかかります。
ロシアンピアノスクール
ロシアンピアノスクールではピアノが打楽器であるということをふまえ、ピアノを弾く時の手首の重要性を教え、また指先を強く保ち、腕の重さを使い、脱力しながら弾くこと、すなわち人間の身体に沿ったエルゴノミックなピアノの弾き方をしっかり教えて行きます。腕の重さを感じられる様に始めは1本の指、3の指で弾くことから教えます。音の芸術であるピアノ演奏において、どのように、腕、手、指等を使いこなせば奇麗な音が出せ、表現豊かな演奏ができるのかがしっかり分析されていているため、理論立てて教えることができます。
例えばピアノは打楽器であるが故に、物理的に弦楽器や人の歌声の様に音を滑らかにつなげることはできませんが、レガート奏法を教える際、音が繋がって聞こえる錯覚(イルージョン)を作り出せる様な腕、手首、手、指等の使い方、音の作り方、聴き方を教えていきます。
ピアノを弾く時、どこか一カ所でも筋肉の緊張があると、潤いのある奇麗な音を出すことはできません。また、速いパッセージ、複雑なパッセージを弾く時の障害になります。以下写真左は従来の固定5指ポジションですが、手首の所で不自然に折れ曲がり、手首と前腕に筋肉の緊張が起こり、腕、手、指を自由に動かすことができません。奇麗で響きのある音が出せない故に、単調で機械的な演奏になってしまいます。写真右は身体の自然な形に沿って手を鍵盤に置いた所で、腕全体、手、指の筋肉がすべて脱力した状態になります。打鍵した時は当然筋肉が収縮(筋肉が働いている状態)しますが、その後手首の動きを使い、すぐに弛緩(脱力)させる技術を教えます。筋肉の収縮と弛緩を素早く自然にできることがピアニストにとって最も大切な技術の1つです。そうすることにより音域の広いピアノの鍵盤を高音部から低音部へ自由に動かすことができ、様々な音色を出すことを可能にし、どんなパッセージでも滑らかに表情豊かに弾くことができる様になるのです。
写真:イリーナ・ゴリン、”ピアノの先生のためのハンドブック”より
Irina Gorin "Hand Book for Piano Teachers"
Irina Gorin "Hand Book for Piano Teachers"